第三回 技術とともに織物への熱い思いを伝承する
養父織物
代表 養父 孝昭(やぶ たかあき)さん(47歳)
織布工 清水 克哉(しみず かつや)さん(20歳)
※年齢は「広報京丹後」2019年6月号掲載時点
丹後織物産地は丹後ちりめんの他にも西陣帯の8割を生産するなど日本の和装文化を支える一大産地です。
そこで第四回では主に帯を製造されている養父織物さんを紹介しました。
従業員の持っている持ち味を最大限に活かしながら、常にチームワークを大切に、技術の伝承に取り組む養父さんと、チームの一員である清水さんにお話を伺いました。

織物について熱く語る養父さん
京都西陣の帯の下請けをしていた養父織物を父親から引き継いだ養父さんは、6年前に工場を改築。
現在は自社工場で、西陣帯の製織を行う。
「注文どおりのことをするだけでなく、取引先に提案できる下請けでありたい」と話す養父さん。
そう思うようになったきっかけはフランスで開催された展示会に出展したことだという。
さまざまな国の「いいもの」を見て、あらためてもの作りの魅力を実感し、「ただ作るだけでなく、できあがるまでの過程を知りたくなり、そこから、紋紙や糸の染めなど織物に関するあらゆることを勉強しました。
それらの知識をもとに素材やデザイン、織り方などについて提案できるようになったことで、取引先と対等な関係を築くことができ、より良いものが作れるようになったと感じています」と話す養父さん。
適正な対価を求めることができるようになり、経営の安定にもつながっているという。
また、西陣の波筬(なみおさ)織機との出会いも養父さんにとって大きな出来事だった。
織手がほとんどいなくなっていた「波筬織(なみおさおり)」の技術を後世に残したいと、仕事が終わると波筬織の研究をし、数少ない織手に教えを乞うため京都市内に通って技術を習得。
約3年かけて養父さんオリジナルの「梭々波織(さざなみおり)」を完成させた。

養父さんの指導を受ける清水さん
「とても手間が掛かり、量産も難しいので、利益にはつながりにくいですが、この技術を絶やさず伝えていきたいと思っています。
『梭々波織』がきっかけで興味を持ってもらい、新たな仕事やものづくりにつながっています」と養父さんは語る。
技術の伝承とともに力を入れているのが、社員教育。
「仕事はチームワークが大切。わからなければ遠慮なく聞き、ベテランは惜しみなく技術を伝えるということをいつも口にしています。
また、人はそれぞれ個性があります。その個性に合った指導をすることで個々の技術の向上を図っています」と養父さん。
育休制度や病休制度も整備するなど働きやすい職場の環境づくりを進めている。
11人いる従業員で唯一の男性従業員である清水さんは、20歳で入社3年目。
現在、製織業務と20台ある織機の経つなぎ作業を任されている。
「仕事はとても楽しいです。しっかりとした準備と正確な仕事をして、経験を積み、任せてもらえる仕事をもっと増やしていきたい」と力強く目標を語っていました。
【用語紹介】
【波筬織(なみおさおり)】
横糸を打ち込む筬おさの形を波形にし、直線ではなく一定の波形を作りながら織る特殊な技法。
【経たてつなぎ】
織機に掛けた経糸を織り上げた後、新しい経糸をつなぐこと。一般的な西陣帯で経糸の本数は約2,000〜8,000本。
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更新日:2020年08月18日