久美浜町布袋野の気張るファーマー(きょうたんご米気張るファーマー通信 Vol.11)

Vol.11 布袋野蛍の会(久美浜町布袋野)

 蛍の棲む環境づくり

 久美浜町の南端、兵庫県豊岡市に隣接する布袋野(ほたいの)地区。豊かな山々に囲まれ、3本の川が流れており、普段は静かな地区であるが、秋の初めは作業場でフル稼働する機械の音と、そこで忙しく動く人々の声が響く。

 平成19年、「農地・水・環境保全向上対策交付金」(現在の「多面的機能支払交付金」)制度において、「布袋野蛍の会」(以下、「蛍の会」という)が設立。会には、布袋野地区の全戸が加入した。

 平成21年には、会員のうち3戸の農業者が、蛍の棲む美しい地区環境を守ろうと、それまで行っていたヘリコプターでの農薬散布をやめ、市外の方の指導を仰ぎ、無農薬・無化学肥料栽培に取り組み始めた。

 初めはわずか3aの面積から始まった無農薬・無化学肥料栽培の作付けは、今や10haの面積にまで拡大し、減農薬・減化学肥料の特別栽培米の作付面積も15haに上る。布袋野地区全体の水稲作付面積が27haということを考えると、地域を挙げて環境を守る姿勢がうかがえる。

 

会長の田中厚さん

「川の合流地点では、毎年、蛍が多く見られる」と話す会長の田中厚さん

 無農薬・無化学肥料栽培の苦労 

 「無農薬・無化学肥料栽培」と耳にすると、安全性が保障されており、なおかつ自然環境を壊さないというイメージが浮かぶが、その裏には農家の大変な苦労がある。

 どんな田んぼであっても草刈りや除草剤等による雑草の抑制が欠かせない中で、蛍の会では除草剤の使用を控えるために、あらかじめ雑草を抑える方法について専門家の指導を受けながら模索した。

 少し専門的な話になるが、田植えの時期に水かさを高くしておくと、稗(ひえ)は生えないというメリットがある反面、コナギは19℃以上の水温であれば生えてくる。このコナギを抑えるために、蛍の会では温かい水温となる5月末に田植えを行い、水面からコナギが頭を出す前にペレットで表面を覆い、EM活性液と糖蜜液と水の混合液を流し込み、発芽を抑制することでコナギは生えにくくなる。

 通常の水稲栽培だけでなく、雑草の特性と適切な時期を見極めながら管理することは、日々気の抜けない作業の積み重ねであり、苦労がうかがえる。無農薬・無化学肥料栽培であるがゆえに、毎年一筋縄ではいかない米作りは、思い通りに収量が得られないこともあり、そのたびに有機肥料を施肥する量や時期を変えるなどの工夫を凝らしている。

 

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稲刈りの時期はコンバインもフル稼働

 地域がひとつになって水田を守る

 「布袋野蛍の会」の名称にもあるように、6月になると布袋野地区には多くの蛍が現れる。蛍の会では、毎年、地区の小学生と蛍の数を数える調査を行っており、令和2年の調査では、「辺り一面に数えきれないほどの蛍が輝いていた」と会長の田中厚さんは話す。

 近年、布袋野地区は高齢化で荒れた農地が増えつつあり、将来の水田をどう維持していくかを考えるなか、個人同士の交渉で水田や環境を維持していくことの限界が見えていた。

 そこで令和2年7月に、地区にある「農事組合法人田吾作」に、布袋野地区の農家・非農家を問わず全65戸が組合員として加入し、地区全体で農地と環境を守っていく仕組みを作り上げた。

 取材に伺ったこの日は乾燥調製と出荷準備の真っ最中で大忙しだ。大きな作業場では、見る限り10名以上が作業に携わり、お互いに声を掛け合い、助け合いながら、それぞれの役割をこなしていく。その額には汗が光っていた。

 

「農事組合法人田吾作」役員集合写真

中心となって米づくりに携わる「農事組合法人田吾作」の役員の方

 

(気張るファーマー通信編集部 松本)

取材日:令和2年9月15日

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更新日:2020年10月23日