大宮町善王寺の気張るファーマー(きょうたんご米気張るファーマー通信 Vol.16)

Vol.16 高杉 和男(大宮町善王寺)

 父から受け継いだ農業

 京丹後市内の繁華街のほど近く、新しい住宅が続々と建っている地域、大宮町善王寺地区。利便性がいいことから、若者や子どもの数が多い地域でもある。

 その地域で生まれ、農業に触れながら育ち、今では地域最大の面積で農業に取り組む者がいる。高杉和男さん(66)だ。

 高杉さんは、葉たばこ栽培をしていた父・弥一郎さんの背中を追いかけて、農業関係の仕事を志し、農業大学校に進学した。昭和51年には旧中郡大宮町のJAに就職し、営農指導・農家指導に14年携わった。

 平成2年に弥一郎さんが葉たばこ栽培をやめる意向があり、長男であった高杉さんは父から農業を受け継いだ。

 

高杉和男さん

農業を受け継いでから、今年でちょうど30年の節目

 農地を守るという強い思い

 現在は水稲栽培を中心に営農しており、コシヒカリを約6割(6ha)、酒造掛米(※1)である「京の輝き」を約4割(3.7ha)栽培している。

 心掛けていることは、安全で安定した米作り。毎年予想ができない気候と、対策してもなお発生する獣害がある中で、安定して生産することはとても難しい。台風などで大きな被害が発生するなど不安になることもあったが、毎年の米作りの積み重ねと、令和2年の土壌改良によって、今後も品質と収量の安定した米作りをしていきたいと励む。

 善王寺地区は新しい住宅が多く立ち並び、他地域から移住してきた若者が多い地域であるが、農業者は多くない。善王寺に生まれ、農業とともに育った方は現在も農業をしているものの、年齢層は高く、離農者も増加傾向にある。

 地域の農業の後継者が減少傾向にある中で、高杉さんは自らが担い手となって経営農地を拡大するとともに、率先して農地を守る計画づくりに携わっており、地元の農地を守っていくという熱意を感じる。その熱意と行動力ゆえに、大宮町域全体の農業者からの信頼も厚く、「高杉さんの頼みなら」と大宮町内の各地区で農地を守る計画づくりが進められている。

 

話し合いの様子

地域の農業者と話し合いながら進める計画づくり(左から3人目が高杉さん)

 学びを通じて未来へつなぐ

 「苦労して作った農産物を食べてもらいたい。後継者を育てるため、農業に興味を持ってもらいたい」。そのような思いから、約28年前に地元の小学校と連携し、子ども向けに大根の収穫体験を行い始めた。

 以来、小学校で農産物の紹介や生産現場について伝える出前講座などを行うとともに、子どもたちの学習のため、実習田における田植え・稲刈り体験にも協力している。

 すっかり穂が実った田んぼをコンバインで稲刈りする高杉さんの姿は迫力満点で、子どもたちの目はくぎ付けだ。

 コンバインがあまりにも勢いよく稲を刈っていくため、子どもたちは「僕たちが刈るのは、これだけ?」と手刈りする稲の量に困惑していたが、実際に手刈りをしてみると、鎌を扱うことも稲を束ねることもなかなか大変だ。高杉さんが子どもたちの前でさっと束ねてみせると、「すごい」と感想が漏れた。

 「実習田の場所は何度か移動して、今の田んぼ(町中にある田)でしているけれど、山側の田んぼで実習をしていた時は獣害に遭って、低い場所で実習をしていた時は台風で水没したんだ。子どもたちは稲刈りもできず、育ったものを廃棄せざるを得なかったのは、本当に残念だった」と胸を痛めたこともあった。

 そのような経験を乗り越え、今も子どもたちに農業を伝え続けるのは、これまで苦労もやりがいもたくさん得ながら「気張ってきた」ゆえに、この地域での農業が未来も続いてほしいと強く願うからなのだろう。

 

稲刈りの様子

地元小学校の実習田にて。周囲をコンバインで刈った後、手刈りする

 

【用語解説】

※1 酒造りの過程で、麹米に加えて大量に使用される蒸した米

 

(気張るファーマー通信編集部 松本)

取材日:令和2年10月6日

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更新日:2021年01月28日