ズワイガニを守る~資源保護のための京都府独自の取組(ズワイガニ編)~

ズワイガニ資源保護のための漁業規制及び京都府独自の取組

 ー第26話 ズワイガニ資源保護の取組ー

 毎年11月6日に解禁となる京のズワイガニ漁は、京丹後市の6隻、舞鶴市の5隻の合計11隻の底曳網漁船によって行われています。

 ズワイガニが漁獲される底曳網漁は、水深約100m~350mの沖合で行われ、袋状の網を海底まで沈め、漁船で網を曳き、ズワイガニの他に、海底付近にいるカレイ類やニギスなどの魚介類が漁獲されます。ズワイガニ漁については、主に水深230m~350mの範囲で行われています。

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【ズワイガニ漁の風景】 

 京都府のズワイガニ漁獲量は、漁獲統計資料が整理された昭和39年以降、昭和39年の370トンをピークに乱獲や混獲の影響により、昭和50年代中頃には約60トンまで減少しました。

 このズワイガニ漁獲量の減少を受け、底曳網の漁業経営や府北部の観光産業にとって重要なズワイガニを持続的に利用するためにズワイガニの資源保護を目的としたさまざまな漁業規制などが設けられました。

 

 今回はズワイガニ漁の漁業規制や資源保護の取組のなかで、特に京都府の漁業者が独自で行ってきた取組みについて紹介したいと思います。

 

〇ズワイガニ漁の漁業規制

 ズワイガニ漁の漁業規制として、国の省令やTAC(漁獲可能量)、石川県から島根県までの関係漁業者による自主的規制として「日本海ズワイガニ採捕に関する協定」などがあり、ズワイガニを漁獲できる期間やサイズ、1航海あたりの漁獲量などが決められています。

 

 このような省令や協定による漁業規制に加え、京都府の漁業者は独自の資源保護に取り組んでいます。

 

1.保護区の設置

 その一つとして、京都府沖合にカニの保護区を設置しています。これは、一辺約3mのコンクリートブロックを複数個海底に沈め、ズワイガニが安心して棲むことができる環境を整えたものです。



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【保護区に沈められているコンクリートブロック】

 保護区では、コンクリートブロックの存在により、底曳網を曳くことができないため、保護区内のズワイガニは漁獲されることなく成長し、繁殖することができます。
 

   このコンクリートブロックを使った保護区の設置は、国や地方自治体の漁場整備事業を活用して昭和58年に全国に先駆けて取り組んだ全く新しい保護策となりました。

 京都府沖合の保護区は全部で6箇所、総面積は約68平方キロメートルで、甲子園球場の約1,700倍、東京ディズニーランドの約133倍に相当する広さとなっていて、ズワイガニの漁場の4.4%にあたります。

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※■:保護区

【京都府沖合の保護区の位置図】


 保護区の設置後、カニの漁獲量は回復傾向を示すようになりました。この成果により、保護区の設置は、現在ではズワイガニ資源管理の最も代表的で効果的な方策として広まり、他県のカニ漁場にも設置されることとなりました。

 

2.操業禁止区域の設定


 ズワイガニの資源量減少の要因の一つとして、混獲ガニの存在があげられています。

 混獲ガニとは、ズワイガニの漁期外にカレイ等を対象とした漁の中に、混ざって漁獲されるズワイガニや、ズワイガニの漁期中であっても漁獲サイズに満たないカニのことをいいます。

 混獲ガニは市場に出荷することができないため、海にリリースされますが、水温や気温が高い時期や脱皮後で体が軟らかい時期などはその多くが死んでしまいます。

 京都府の漁業者は、この混獲ガニを減らす取組を行っています。
 

 底曳網の漁は9月1日から翌年の5月31日までで、ズワイガニの漁期は雄が11月6日から翌年の3月20日まで、雌は11月6日から12月31日までとなっています。なお、6月から8月は休漁期となっています。

 ズワイガニ漁期前の9月1日から11月5日までの秋漁期には、ズワイガニが生息する区域でアカガレイやホッコクアカエビなどを狙った漁が行われ、多くの混獲ガニが見られました。この時期の混獲ガニはリリースされても大部分が死亡することから、昭和54年にズワイガニが生息する水深約220〜350mの広い範囲を操業禁止区域としました。

 また、カニ漁終了後の3月21日から5月31日までの春漁期には、主にアカガレイ漁で大量の混獲ガニが見られたことから、平成6年に水深約230〜350mの範囲を操業禁止区域としました。

 秋漁期、春漁期の禁止区域については、同区域で操業する他県の底曳網漁船についても守られています。
 府海洋センターの調査結果では春漁期の禁止区域の設定後、雌ガニの年間の生き残り率が12%高くなったことが分かっています。
 

3.改良網の導入

 操業禁止区域の設定に加え、京都府の底曳網漁船では、混獲ガニを減らすため、改良網を使用しています。
 改良網とは、通常の網より目合を大きくしたり、構造を工夫することで、規定サイズに満たないものや、ズワイガニ漁期外での混獲を防ぐように改良された網のことです。

 京都府の底曳網漁船ではこの改良網を平成14年ごろから導入し、混獲ガニの減少に努めています。

 

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【改良網】

 

 4.水ガニの漁獲禁止

 ズワイガニの中でも、脱皮後数ヶ月以内で、殻が軟らかくて、身入りの悪い雄ガニは水ガニと呼ばれています。水ガニは、市場価格が通常の雄ガニの1/10程度と低く、交尾能力を持たないことから未成熟といわれています。

 水ガニは徐々に殻が硬くなっていき、翌年のカニ漁期には、立派な雄ガニとなり、交尾能力も備わって、繁殖ができるようになります。
 京都府の漁業者は資源を持続的かつ有効利用するために、平成11年度から水ガニの漁獲制限サイズの拡大と漁期の短縮を実施しました。

 さらに、平成20年からは、他県に先駆けて水ガニの漁獲を全面的に禁止する厳しい規制を行っています。この取り組みは府沖合で操業する隣接県の漁船でも守られており、他県の沖合でも徐々に広がりつつあります。
 

 

5.新たな取組み【海底耕耘の実施】

 その他にも、漁業者による新たな取組みとして、今年度からズワイガニ漁場の海底耕耘を試験的に行うこととなりました。
 

  海底耕耘とは、鉄製の桁や、突起のついた丸型鋼管を海底に沈め、それを船で曳くことによって、海底を耕し、漁場の底質環境を改善しようというものです。
 実際に、兵庫県ではのりの色落ち対策として実施され、また福井県では海底耕耘を行った海域で魚介類の密度が増えたとの報告もあります。
 漁業者は、この海底耕耘の効果によってズワイガニの資源量がさらに増えることを期待しています。

 

 このように京都府の底曳網漁業者は、ズワイガニを貴重な水産資源の一つとして捉え、資源量の減少を問題視し、他県に先駆けてさまざまな資源保護に取り組んでいます。

 

参考資料:京都府HP. 「5 ズワイガニ漁業(応用編)」.https://www.pref.kyoto.jp/kaiyo/zuwai6.html

「6 ズワイガニの保護(資源管理)応用編」,https://www.pref.kyoto.jp/kaiyo/zuwai7.html

京都府漁業協同組合発行「京都の海の幸」(2020.6改訂)

 

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更新日:2023年01月23日