5月11日 丹後町袖志の棚田で手植え体験
今回は、普段取材している圃場を飛び出し、丹後町袖志(そでし)の棚田で手植え体験イベントに行った報告です。
この活動は、次世代に袖志の棚田を残していくために、袖志棚田保存会が主催しているもので、毎年、大学生や社会人ボランティアの皆さんと一緒に再生した棚田の田植えと稲刈りを行っており、今年で活動10年目を迎えました。
袖志の棚田は京都府でも最北端の経ヶ岬灯台のすぐそばに位置する集落内にあり、再生された田の広さは約25アール(2,500平方メートル)。1999年農林水産省「日本の棚田百選」にも認定されています。棚田から眺める景色も絶景ですが、棚田そのものが「日本の原風景」ともいえる美しさです。
田植えの開始にあたり、地元の方から田植えの仕方と注意点について説明を受けます。
「1回につき苗は3本取る!苗は指の第二関節分ほどの深さに差し込む!まっすぐに植える!これだけは守ってほしい!頼むど!」
シンプルですが、この注意点を守ることがいかに難しいかを後で思い知ることになります。
それでは、日焼け止めをしっかり塗って、帽子をかぶって、ズボンのすそをしっかりと捲って、裸足で田植えスタートです!(地元の方はしっかりと足に密着する田植え用の長靴を履いておられました。)
まずは、まっすぐに苗を植え始めるために、田んぼの中に一列に並んでいきます。
――裸足で田んぼに入った感想はどうですか?
(大学生)「キャー!どろどろで足が吸い込まれる!!うわー!カエルがきた!!」
子どもから大人まで一列に並べたところで、「田植え綱」という均等に苗を植えるための目印を示す道具を用いて、1列目の苗を一斉に植えます。
1回に植える苗は3本分…と手に持った苗を根っこからつまみ取って植えていきます。1列目はなんとかできました。
「おーい!みんな植えたかー!一歩下がるどー!」
地元の方の大きな声が響きます。まっすぐに植えるためには、みんなで一斉に下がっていかないといけません。時間も限られているため、それなりの速さで進んでいきます。
進むにつれて、苗を3本つまみ取ってリズムよく植えていくことが難しくなってきます。縦横のまっすぐさを意識するとなおさら難しいですし、足を入れていたところの土はくぼんでいるので手で平らにならしながらの作業です。
植えて一歩下がる、を何度も繰り返し、やっと1枚の田んぼに苗が植わりました。所要時間は30分程度。
さて、ここまでは写真撮影と状況の把握に専念していたわけですが、2枚目の田んぼにさしかかろうとしたとき、
「さあ、田植えするよ!」
と誘われ、人生初の手植えをすることとなりました。裸足の人がほとんどでしたが、長靴を履いて来ていたので、あえて長靴で入ることにしました。
ですが、長靴で入ると大変なことに気づきます。
――あの、土に足が埋まってしまって抜けないんですが…
(社会人)「それはね、長靴だからだよ!裸足だと指の間から土が抜けていくから歩きやすいよ。とりあえず、腕につかまって!」
と、周りの方に支えられながら何とか田んぼの中を進んでいると、苗のかたまりがポーンと飛んできました。面白いことに、投げられた苗は必ず根っこが下になるようです。
この苗を左手に持ち、先ほどと同じように苗を植えながら一歩一歩下がっていきました。
実際に田植えを終えてみると、常に中腰と前かがみの姿勢だったためか、肩と腰がずっしりと重たいような感覚になりました。
長靴を履いてすいすいとテンポよく、そしてまっすぐに苗を植えていく地元の方々の姿からは、これまでの経験の積み重ねを感じ取れました。田植えは、想像以上に大変なものでした。
今はなかなか手植えでの米作りをすることは少なくなってきていますが、棚田を守っていく取り組みのなかでは、手植えで米作りをすることや手植えの作業風景そのものが価値あることだと思います。
対して、機械を使って田植えをする場合でも、広大な田んぼに数人で苗を植えて、その田を管理していくことは本当に大変なことだと思います。私たちがおいしいお米を日々食べることができるのも、農家のみなさんが大切にお米を育ててくださっているからですね。
今後も、稲作ブログ取材班として、丹後のおいしいお米の秘密を解き明かすべく、稲作を追いかけていきたいと思います!
手植え体験の翌日に肩と太ももが筋肉痛になったのは、言うまでもありません。
(松本 農業振興課1年目)
更新日:2019年05月13日