5月24日 (稲作ブログ出前講座)なぜ、イネは水田でつくられるのか?
皆さんが普段食べているお米は主に水田で作られています。
では、なぜイネは畑ではなく、水を張った田んぼで作られるのか?
そもそも田んぼに水を張る意味は何なのか?
水田の水には多くの役割があるのですが、皆さんはご存じでしょうか?
田植えが始まり、多くの田んぼに水が張られるこの時期。
今回はイネを育てる上で重要な「水」について、皆さんにご紹介したいと思います。
田植え時期は、このように田んぼに水を張った光景が広がります。
それではまず、水田の「水」の役割って何でしょうか?
ざっと挙げてみますと、雑草・病害虫の抑制、連作障害の抑制、作物の保温、除草剤の効果を発揮させる、水害の防止・・・ほかにもまだまだあります。
特に大事なところを細かく見ていくと、まず、水を張ると土の中は酸素がない状態になるので、多くの雑草の種子が呼吸できずに芽を出すことができなくなります。これによって、水を張らない畑に比べて雑草の数は少なくなります。
さらに、作物に悪さをする病害虫も、水が張ってあると住みづらい環境となるため、その数が少なくなります。これが大事なポイントで、一般的に同じ土地に同じ作物を毎年育てていると、土の中の病害虫が増えてしまうことによって作物が被害を受け、収穫量が減ってしまう現象(連作障害といいます)が起こります。水を張り、病害虫が住みづらい環境にすることで、毎年同じ田んぼでイネを作ることができるのです。
水を張ることで、イネが育ちやすい環境を整え、連作障害を起こすことなくイネを毎年栽培できるんですね。
次に、イネは熱帯で生まれた作物なので、気温が低くなると冷害という、育ちが悪くなったり、穂 (お米) ができなくなる被害を受けやすく、秋に収穫する量が減ってしまうことがあります。
しかし、水は熱を吸収して逃がさない効果(比熱が大きいといいます)があるので、気温が低くなっても水の中は温かい環境となっているため、イネを冷害から守ってくれます。
なるほど、水はいろんな要因からイネを守り、田んぼを安全な環境にすることでイネが育つのを助けているんですね。イネにとって水は必要不可欠な存在といえます。
では、コムギなど多くの作物は水を張ると根に十分な酸素を供給できなくなり、死んでしまうのに、なぜイネは水を張った無酸素状態でも育つことができるのでしょうか?
それは、イネの中にある「空気を通す組織」が発達しているからです。
イネは、根から茎・葉まで空気を通すことができるのに加え、根から酸素を逃がさないようにするバリアがあるので、たとえ根が酸欠状態になっても、茎・葉で吸収した酸素を根まで効率よく送ることができるので、水を張った水田でもイネは育つのです。
水田が作ってくれる安全な環境。
そして水を張った状態に強いイネ。
この2つの理由で、お米は水田で作られているんです。
最初にイネを水田で育ててみようと思い立った人は本当に凄い!
そんな水田のイネと水の関係について、次回は特に水田の水管理についてお話できればと思います。
ありがとうございました。
(斉藤 京都府丹後農業改良普及センター1年目)
更新日:2019年05月24日