6月14日 (稲作ブログ出前講座)イネを育てるときの水の管理はどうしているのか?

 

前回はイネを育てる上で、水が大切な存在であることをお話しました。
今回はその水を、田植えから収穫までどのように管理していくのかをお話したいと思います。

皆さんは、田んぼに張られている水の量がどのように管理されているかご存じですか?
たしかにイネを育てる上で水は大切とお伝えしましたが、ただ闇雲にたくさん水をやればいいということではありません。

まずは、田植えから収穫までの水の管理を一気に見ていきましょう。

図に沿って説明していきます。

 

図解

まず、田植えをしてすぐは、苗を低温から守るために水を深く張り、保温します。

すると、土に根づいて生長(活着といいます)し始めるので、その後はさらに生長を促すために水を浅くして地温を上げたり、光を受けやすくします。

 

次に、重要な作業がやってきます。

それは、「溝切り」と「中干し」です。

 

田んぼの中では、いろいろな化学反応が起こっています。肥料として施した、あるいは土にもともとあった栄養分が、土の中に住む菌たちによって化学反応を起こされ、根に吸収できる物質に変化したり、反応の過程で有害なガスを発生したりします。

有害なガスが田んぼの中に溜まっていくと、イネは被害を受けてしまいます…。

そこで、「中干し」という作業を行います。
水をずっと張っていると、ガスが逃げないので、2日から長いところで7日ほど水を落として、田んぼをカラッカラにします。すると、空気に触れさせた土から有害なガスが抜けてくれるので、イネがその後も元気に育つことができるのです。

その中干しをする時に排水しやすくする作業が「溝切り」です。
田んぼの中に何本も溝を掘り、排水口までつなげることで、田んぼの水を落としやすくするのです。

いろんな工夫が施されて、お米は作られているのですね。

 

そして、収穫する時のために一旦は土を硬くし、その後は「間断かんがい」を行います。

これは、水を浅く張るのと、水を落として田面を乾かす作業の繰り返しです。
イネが水不足にならないように適度に水をあげ、また、適度に乾かすことで、土を硬くしていくのです。

7月~8月になるとイネはかなり生長してきて、穂ができ始めます。
この時期は水や酸素を多く必要とするので、水不足にならないように水を浅く張ります。

こうして育てたイネが秋になり、稲穂がきれいな黄金色になると、収穫され、お米として皆さんの食卓に並ぶのです。

 

イネにとって大切な水。よくよく観察すると細かく管理されていて、そこには色んな意味があるんです。

普段何気なく見ている田んぼも、じっくり見ると時期ごとに水の量が変化しているはずです。
農家の皆さんの意図を考えながら観察してみると、面白いかもしれませんね。

 

長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

 

 

(斉藤 京都府丹後農業改良普及センター1年目)

 

 

 

更新日:2019年06月14日